息子のひとりごと

 我が家から2時間足らずの所に住んでいる息子(大学2年生)が久しぶりに
帰省してきた。目的は高校の部活のOB会。交通機関か自転車で会場まで
行けばいいものを「送って」と平気で言う。「こいつー」と思いながら送ってや
る私も私だが・・・

 目的地までの車の中で息子が面白いことを話してくれた。息子は工学部
建築系の学科である。小さい頃から建築士になりたくて、それを目標にいく
つかの大学の工学部建築科を受験した。結果は現在通学している大学の
建築系学科しか合格しなかったが、目的の勉強ができると喜んで家を出て
行った。

 ところが、部活・アルバイトに明け暮れて、1年生の成績表には「不可」が
いっぱい。こんなことでは4年生進級時に留年するおそれも十分出てきて、
とにかく学生の本分である勉学を第一にしようと、部活もバイトもやめた。そ
れでも、徹夜しなければならないぐらい設計製図の課題が出るそうである。

 まだ息子は設計や製図が好きだから徹夜しても苦にならないらしいが、そ
れほど好きでない人にとっては、卒業後も建築や設計の仕事に就くのは耐
えられないらしい。では、なぜ建築系の学科に入学したのか?

 息子が言うには、建築系の学科を卒業した学生でその道に進む人は半分
ぐらいだと言う。要するに入学時に将来のことを考えずに建築系学科に入学
してくる生徒が多いと言うことらしい。自分がやりたい勉強よりも、自分の学
力(偏差値)ならば、工学部の中でもレベルの高い「建築学科」かな、みたい
なノリで志望学科を決めている学生が結構多いらしい。

 大学の勉強でもパソコンを使って高度なソフト(当然価格も高い、そしてそ
のソフトを動かすためにはパソコンもかなり高スペックなものが必要になって
くる)のCADで設計製図をするのである。パソコンが苦手では話にならない世
界なのである。もちろんパソコンだけではない。美的センスも必要だし、建物
や景観に対するセンスも必要である。が、基本となる図面が引けなければ話
にならない。昔は手書きだったが、今時パソコンが扱えない建築士なんて、
考えられない。

 そして、もう一つ始末に負えないのが、とりあえず建築士の資格を取って大
学を卒業した人が、公務員試験にはめっぽう強くて、建築部局に入庁してし
まうことだそうだ。民間なら腕が悪ければ当然注文も来なくなるだろうが、役
所は競争相手がいないから、建築士もどきの人でもなんとかやっていける。
というより、被害を受けるのは県民であり市民なのである。

 要するにこういう人は建築士になりたかったのではなく、公務員になれれ
ばよかった。たまたま建築士の資格を持っていたのでその方面で採用された
ということになったら、本当に始末が悪い。しかし、こういう事例はこればかり
ではなく、教師などの世界でも問題になっている。しかも公務員だから一度
採用したらなかなかクビにするのはむずかしい。だけどどの部門も専門的な
分野だから、採用する時点でその人の能力を判断するのは難しい。

 って、こんなことを話しながら「帰りも迎えにきてね」などと、どさくさに紛れて
息子に頼まれてしまった。何たる甘えた息子に、甘い親であろうか。まー、た
まにしか帰ってこない息子の頼みだから、そして年に一度はまっさんのコン
サートの時に息子のアパートをホテル代わりにするから仕方ないか・・・
                                    (2005. 8.20 記)


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