祝婚歌

 元NHKの名アナウンサー、高橋圭三さんが4月11日(金)に亡くなった。享年83才。
天寿をまっとうされての泉下への旅立ちである。私の記憶としては、「紅白歌合戦」
より「日本レコード大賞」や「新春かくし芸大会」のほうが鮮明に焼きついている。

 軽妙洒脱だが、けっして軽くはない。司会者としての立場をわきまえ、出演者より
目立つこともなく、それでいて心に残る言葉やフレーズをいくつも残した本当に名
アナウンサーだった。正しい言葉遣いもできないくせに芸能人のようになりたくて、
局アナになる若者が多い昨今、高橋圭三さんのようなアナウンサーを目指します、
と胸を張って入社する新人アナの一人や二人いて欲しい、と願う私はすでにおば
ちゃんなのだろうか。

 ところで、17日に行われた圭三さんの告別式には、彼が生前いつも愛唱していた
詩の朗読テープが流されたそうだ。私も何かのときに聞いた記憶がある。たしか、
圭三さんの朗読だった。でも、今回しっかりと聞かせてもらい、しみじみと夫婦って
こうあるべきなんだなー、と思った。ほとんど夫と口も利かない私がこんなこと言えた
義理でもないが、いい詩なので、下に掲載します。(作者が著作権などは問わない
ということだそうなので)

「祝婚歌」

吉野弘

二人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい 立派すぎることは
長持ちしないことだと 気付いているほうがいい

完璧をめざさないほうがいい 完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい

二人のうちどちらかが ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい

互いに非難することがあっても 非難できる資格が
自分にあったかどうか あとで疑わしくなるほうがいい

正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい

立派でありたいとか 正しくありたいとかいう 無理な緊張には
色目を使わず ゆったり ゆたかに 光を浴びているほうがいい

健康で 風に吹かれながら 生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなるそんな 日があってもいい


そして なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても 二人にはわかるのであってほしい


なんか、久しぶりにシリアスな「ひとりごと」を書いてしまった。合掌。
                              (2002. 4.18 記)

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